医療法人の出資に係る最高裁判決2件を紹介します。 いずれも、大きな逆転判決です。
まず、1)の方です。 高裁において、医療法により「自己が出資した額の限度でその返還を請求することができる」と判断していたものを、最高裁において、定款の規定により「医療法人の全財産の評価額に出資割合を乗じた額を請求することができる」と判断したものです。
【定 款】 「退社した社員は出資額に応じて返還を請求できる」と規定 【医療法】 医療法人が行う剰余金の配当を禁止
次に、2)の方です。 高裁において、基本財産と運用財産とに分割し、分配可能な運用財産が債務超過であるため、ゼロ評価と判断していたものを、最高裁において、財基通194-2により時価ベース(類似業種批準価額)で評価すべきと判断したものです。
1)最高裁判例 10.04.08 出資金等返還,損害賠償請求事件 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80092&hanreiKbn=01
医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて分配する旨の規定がある場合における,同定款中の退社した社員はその出資額に応じて返還を請求することができる旨の規定の解釈
2)最高裁判例 10.07.16 贈与税決定処分等取消請求事件 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=80460&hanreiKbn=01
社団たる医療法人が社員退社時の出資の払戻し等の対象を当該法人の一部の財産に限定する旨を定款で定めている場合において,贈与税の課税に当たり当該法人の財産全体を基礎として当該出資を評価することに合理性があるとされた事例
2010年8月22日 <5:03 > 田中良幸 |